東北大学大学院医学系研究科 感染病態学分野
東北大学大学院医学系研究科 総合感染症学分野
東北大学病院 総合感染症科/感染管理室

研究内容Research

総合感染症学分野の研究

1.薬剤耐性菌のゲノム疫学研究

基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌に関する分子疫学的研究を行い、耐性株の地域特性や国内流行クローンの伝播状況を明らかにした。カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌のゲノム解析により特定のクローン及びプラスミドを介した伝播メカニズムの解明に取り組んでいる。問題となる薬剤耐性菌、耐性遺伝子の種類や検出頻度には地域差があり、適切な抗菌化学療法と効果的な感染対策を実施するために、地域における微生物ゲノムと感染病態に関する研究を推進している。

2.薬剤耐性ワンヘルス研究

国内外の環境から薬剤耐性因子が検出され、薬剤耐性ワンヘルス(ヒト・動物・環境)への関心が高まっている。日本における環境中の薬剤耐性の現状と課題を明らかにした。環境中の薬剤耐性及び抗菌薬の調査法の確立に向けた研究と地域の実態調査を進めており、環境中の薬剤耐性や抗菌薬がヒトへ与える影響を検討している。

3.人・環境における病原微生物の伝播経路解明と医療関連感染制御システムの構築

医療施設内環境の病原微生物の汚染と医療関連感染(Healthcare-associated infection: HAI)との因果関係や、医療施設内環境の病原微生物から入院患者・医療従事者への直接的・間接的伝播メカニズムについては不明な部分が多く、適切な医療環境の汚染調査・モニタリング方法や医療環境の清掃・消毒など整備法については未だ明確でない。医療環境中の病原微生物の実態の解明と効果的な汚染モニタリング方法の構築、HAI発生の患者側リスク因子の解明とHAI発生予測モデルの構築、及び人-環境間の病原微生物伝播経路の解明とその遮断による新規HAI制御戦略の開発により、HAI発生リスク低減を目指している。

4.ヒト・家畜・環境水に由来する志賀毒素産生性大腸菌の包括的分子疫学研究

本邦において、致死的な志賀毒素産生性大腸菌(Shiga toxin-producing Escherichia coli;STEC)感染症の新規患者は、現在でも年間2,000~3,000人と高い水準にあるが、その感染経路の多くは不明である。本研究では、ヒト・家畜・環境水それぞれにおけるSTEC株の分子疫学的特徴及び遺伝的関係性を明らかにすることでSTEC株の感染伝播経路を推定し、経路遮断によるSTEC感染対策の確立と新規のSTEC感染者数低減を目指している。

5.機械学習を用いた人工知能データ解析による感染症診療支援システムの開発

昨今の人工知能の目覚ましい発展を受けて、人工知能を用いた医療の質の向上を目指した取り組みが世界中で盛んになっており、感染症領域においてもその応用が期待されている。当科においても、東北大AIラボの協力を受けて、COVID-19や血液培養陽性患者の診療支援システムの開発を進めている。

6.症例報告の奨励

後期研修医・フェロー・大学院生など若い先生を中心に、珍しい症例や教訓的な症例を中心にまとめ、Lancet Infectious DiseasesやEmerging Infectious Diseasesなどにも掲載されている。そこで、感染症診療において一例、一例大事に診察を行い様々な診療科と連携を深めながら、学会発表・論文発表を行う事を推奨しています。